この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:地目変更登記など表示に関する登記全般。

経歴:開業以来21年間、地目変更など登記に関する業務を行っています。
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「地目変更って何をする事で、どんな場合に必要?」
「地目変更登記に申請義務や期限、罰則はある?」
「地目変更は自分でできる?費用や必要書類は?」

土地の地目変更について、
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、土地の地目変更について、
土地の地目変更登記申請業務を行っている土地家屋調査士が、
わかりやすく解説いたします。

この記事をすべて閲覧することで、土地の地目変更とは何かと、
申請義務や罰則の有り無し、自分でできるかどうかや、費用と必要書類がわかります。

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地目変更とは?

地目変更とは、すでに登記されている土地の地目について、
下図1⇒2のように、土地の利用状況が変更された場合に、
下図3⇒4のように、変更後の現況の地目と、
登記上の地目を一致させることです。

地目変更前の現況
(図1:地目変更前の現況)
地目変更後の現況
(図2:地目変更後の現況)
地目変更前の登記記録
(図3:地目変更前の登記記録)
地目変更後の登記記録
(図4:地目変更後の登記記録)

上図の例は、現況が畑だった土地に、建物を建てたことで、
登記上の地目を、畑から宅地に地目変更が必要になった例です。

土地の現況が自然に変更した場合も、人為的に変更した場合も、
登記されている地目以外の地目になれば、
登記上の地目を、現況の地目に合わせる登記が必要になります。

そして、登記上の地目を、現況の地目に合わせる登記のことを、
地目変更登記と言いますが、
略して、地目変更と言うこともあるのです。

地目は何に変更する?

土地の地目は、不動産登記事務取扱手続準則第68条で、
田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、
山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、
用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、
雑種地の23種類が定められています。

これら23種類以外の地目は認められていないため、
23種類の地目の内から、現況と一致する地目を1つ選び、
その土地の地目として、変更することになります。

地目の判断の仕方

土地の地目の判断については、
土地の部分的な利用状況だけで判断するのではなく、
一筆の土地全体の利用状況を総合的に見て、
判断しなければなりません。

たとえば、下図5のように、土地の一部に耕作部分があっても、
土地の大部分が建物の敷地として利用されていれば、
通常、利用目的からも、畑部分は家庭菜園と判断し、
一筆の土地全体の地目としては、宅地と判断するのです。

地目の判断の例
(図5:地目の判断の例)

土地の一部の地目が変更したら?

例えば、下図6のように登記の地目が山林の一筆の土地の一部を、
公衆用道路など、登記の地目と異なる地目にした場合は、
その部分を分筆してから、地目を変更する登記、
すなわち、一部地目変更による分筆登記が必要になります。

一部地目変更・分筆登記が必要な例
(図6:一部地目変更・分筆登記が必要な例)

地目変更登記が必要なのは、どんな場合?

土地の地目変更登記が必要になるのは、
土地全体の現況又は利用状況を見て、
登記上の地目以外の地目に変更されていると判断できる場合です。

ただし、次の2つの内、いずれかにあてはまる場合には、
地目変更があったとは、認定されません。

  1. 土地の現在の利用状況が、一時的なものと認められる場合
  2. 他の地目への変更過程で、いわゆる中間地目の場合

まず、土地の現在の利用状況が一時的なものというのは、
たとえば、田又は畑などの土地を一時的に借りて、
下図7のように、資材置き場などにしている場合のことです。

土地の現在の利用状況が一時的な例
(図7:土地の現在の利用状況が一時的な例)

このような場合、現況が資材置き場として利用しているので、
地目は雑種地に見えますが、短期間の利用が前提の場合には、
通常、地目に変更があったとは認められません。

つまり、現在の利用状況が一時的と判断される場合は、
地目変更登記の申請は不要で、逆に、現在の利用状況が、
長期間に及び、従前の利用状況への復元も容易ではない、
と判断される場合に、地目変更登記の申請が必要になるということです。

次に、いわゆる中間地目というのは、たとえば、
下図8のように、山林を一部切り崩して、更地にした上で、
建物を建てる場合の中間の地目のことです。

中間地目の例
(図8:中間地目の例)

最終的には建物を建てて、地目は宅地になる予定なのですが、
その過程での更地の状態は、通常、地目は雑種地と言えます。

しかし、そのような中間地目については、
地目に変更があったとは判断できないということです。

最終的に建物が建ってから、その土地の登記上の地目を、
山林から宅地へ地目変更登記することになります。

なお、地目は一筆の土地に1つしか認定できません。

そのため、下図9のように、一筆の土地の一部が、
山林(又は畑)から宅地などのように別地目となった場合には、
別地目となった部分の土地を分筆登記してから地目変更するか、
又は、一部地目変更・分筆登記をする流れとなります。

一部地目変更・分筆の例
(図9:一部地目変更・分筆の例)

地目変更登記に申請義務や期限、罰則はある?

土地の地目変更登記には、申請義務も申請期限もあります。

なぜなら、不動産登記法第37条第1項で、
地目変更登記の申請義務と申請期限について、
次のように定められているからです。

不動産登記法第37条(地目又は地積の変更の登記の申請) 地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。

引用元: e-Gov法令検索.「不動産登記法 」. (参照 2024-8-22)

つまり、土地の現況又は利用状況が、
登記上の地目以外の地目となった場合には、
地目が変更した日から1ヶ月以内に、
土地の地目変更登記を申請しなければならないということです。

そして、地目の変更があった土地の表題部所有者、
又は、所有権の登記名義人に、
地目変更登記の申請義務があるということになります。

なお、このことは、一筆の土地の一部が、
登記上の地目と異なる地目となった場合に行う、
一部地目変更・分筆登記にも当てはまると考えられます。

分筆登記の申請自体は、所有者の意思によるものですが、
地目変更に申請義務が課せられているため、
地目変更登記の前提となる分筆登記にも、
申請義務が課せられていると考えられるからです。

また、地目の変更があった後に、
所有者の変更があった場合については、
不動産登記法第37条第2項で、
次のように定められています。

不動産登記法第37条第2項(地目又は地積の変更の登記の申請) 地目又は地積について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない

引用元: e-Gov法令検索.「不動産登記法 」. (参照 2024-8-22)

つまり、地目の変更があった後に、
所有者の変更があった場合には、
所有者の変更の登記があった日から1ヶ月以内に、
土地の地目変更登記を申請しなければならないということです。

そして、この場合も、地目の変更があった土地の表題部所有者、
又は、所有権の登記名義人に、
地目変更登記の申請義務があるということになります。

地目変更登記の申請人は誰?

土地の地目変更登記の申請人は、
その土地の表題部所有者か、
所有権の登記名義人となります。

土地の表題部所有者というのは、
下図10のように、土地の登記記録の表題部に、
所有者として記載されている人のことです。

土地の登記記録の表題部所有者の例
(図10:土地の登記記録の表題部所有者の例)

上図10の例では、所有権の登記がされていないため、
土地の表題部所有者が、地目変更登記の申請人になるのです。

次に、土地の所有権の登記名義人というのは、
下図11のように、土地の登記記録の権利部に、
所有者として記載されている人のことです。

土地の登記記録の所有権の登記名義人の例
(図11:土地の登記記録の所有権の登記名義人の例)

上図11の例のように、土地の登記記録に権利部がある場合、
土地の所有権の登記名義人が、
地目変更登記の申請人となります。

もし、所有者が複数で共有の場合には、
共有者全員が申請人となり、申請するのが原則です。

しかし、実務上は、共有者の1人から申請することも可能です。

また、土地の所有者が亡くなっている場合には、
その相続人の内の1人から、相続証明情報を添付して、
地目変更登記を申請することができます。

地目変更登記をしない場合の罰則は?

土地の地目に変更があったにもかかわらず、
変更があった日から1ヶ月以内に、
地目変更登記の申請をしていない場合には、
次のように罰則が定められています。

不動産登記法第164条(過料) 第37条第1項若しくは第2項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

つまり、地目に変更があった土地の所有者に、
地目変更の申請義務があり、それをしなかった場合には、
10万円以下の過料に処せられるということです。

しかし、地目に変更があった日から1ヶ月以上や、
数年経過していたとしても、今の所、
10万円以下の過料に処せられた事例は聞かないので、
罰則のことは心配する必要は無いと言えます。

地目変更は自分でできる?

土地の地目変更は、多少の手間と時間がかかっても良ければ、
ご自分でもできる登記と言えます。

なぜなら、地目変更登記の申請では、
土地の測量や図面の作成のような専門的な技術が不要で、
登記申請書など比較的簡単な書類の作成のみで、
申請できる登記だからです。

ただ、地目変更の登記申請書には、様式があり、
登記申請書の書き方や、添付が必要な書類も細かく決められています。

そのため、登記申請書類に不備や不足があれば、
補正作業などが必要になることに注意が必要です。

地目変更の費用と必要書類は?

地目変更の費用と必要書類は、ご自分でする場合と、
土地家屋調査士に依頼する場合とで違いがあります。

そこで、それぞれの場合の費用と必要書類を、
簡単にご説明いたします。

地目変更を自分でする場合の費用と必要書類

地目変更を自分でする場合の費用としては、
用紙代や、印刷代、電気代、交通費などで、
せいぜい数千円程度となります。

また、地目変更登記では、登録免許税はかかりませんし、
法務局への登記申請手数料もかかりません。

そして、地目変更登記をご自分で申請する場合、
通常、次の書類が必要になります。

  • 地目変更登記申請書
  • 農地の地目変更の場合のみ、農地法関係書類

地目変更を土地家屋調査士に頼む場合の費用と必要書類

地目変更登記を土地家屋調査士に依頼した場合、
費用としては、だいたい5万円前後が相場です。

しかし、地目変更する土地が2筆以上ある場合は、
筆数加算費用などが加わりますので、
もう少し高くなる場合もあります。

そして、地目変更登記を土地家屋調査士が代理申請する場合、
通常、次の書類が必要になります。

  • 地目変更登記申請書
  • 農地の地目変更の場合のみ、農地法関係書類
  • 委任状などの代理権限証明情報
  • 調査報告情報

なお、土地の地目変更に必要な書類については、
「土地の地目変更の必要書類は?」で、
くわしく解説しています。