この記事の監修者

土地家屋調査士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)、行政書士。
取扱い分野:地目変更登記など表示に関する登記全般。

経歴:開業以来23年間、地目変更など登記に関する業務を行っています。
土地家屋調査士のプロフィールはこちら

家を建てたい、あるいは購入を検討している方にとって、
土地の地目が『山林』だと、そもそもどんな土地で、
家を建てられるのか、また原野や雑種地、宅地とどう違うのか、
不安に感じることも多いでしょう。

この記事では、地目変更の登記申請業務を行う土地家屋調査士が、
山林の定義から、住宅建築の可否、そして他の地目との違いまで、
具体的にわかりやすく解説致します。

スポンサーリンク

この記事をすべて閲覧することで、地目が山林とは何かがわかり、
山林に家は建つのか、原野や雑種地、宅地との違いもわかります。

【この記事の内容を動画で見る】

この記事と同じ内容を、【動画】でも見て頂けます。
記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。

山林とは?

山林とは、不動産登記規則第99条で、
23種類定められている土地の地目の1つです。

不動産登記規則第九十九条

地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。

e-Gov法令検索.「不動産登記規則 」. (参照 2025-07-3)

また、不動産登記事務取扱手続準則第68条第9号で、
山林は、「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」
と規定されています。
(出典:不動産登記事務取扱手続準則 – 法務省

では、耕作の方法によらないで、
竹木が生育する土地というのはどういう土地かと言えば、
下図1のように、人の手が加えられていなくて、
竹や樹木で覆われている土地ということになります。

竹木が生育する土地の具体例
(図1:竹木が生育する土地の具体例)

竹木とは、下図2のような竹と樹木のことをいい、
樹木の種類としては、杉やひのきなどの材木だけでなく、雑木も含みます。

竹木の具体例
(図2:竹木の具体例)

なお、家を建てることを検討しているあなたにとって、
山林に家を建てることは簡単ではありません。

なぜなら、下図3のような土砂災害の危険がある山林では、
家を建てるのを諦めなければならないことがあり、
水道管や電気などの引き込みが、難しい場合もあるからです。

土砂災害の危険のある場所の具体例
(図3:土砂災害の危険のある場所の具体例)

また、森林法に基づく指定によって保安林となっている土地は、
保安林の解除がされないと、家を建てることはできないので注意が必要です。

森林法に基づく指定によって保安林となっている土地の具体例
(森林法に基づく指定によって保安林となっている土地の具体例)

では、山林に家は建てられるのかを、
地目が山林とは具体的にどんな土地なのかを踏まえ、
詳しく見ていきましょう。

地目が山林とは、具体的にどんな土地?

地目が山林とは、下図4のように、耕作の方法によらないで、
竹木が群生している土地を指します。

地目が山林の具体例
(図4:地目が山林の具体例)

これは、人の手で管理・耕作されていない状態で、
自然に竹や樹木が生育している土地のことです。

地形の場所を問わず、平坦地、傾斜地、森林地帯など、
どこであっても、自然に竹木が生い茂っている土地であれば、
不動産登記法上の地目は、山林と判断されます。

(平坦地の地目が山林の具体例)
傾斜地で森林地帯の地目が山林の具体例
(傾斜地で森林地帯の地目が山林の具体例)

山林に家は建てられる?

山林に家は建てられるのかどうかについては、
下図5のように、土地の登記上の地目が山林でも、
現地が山林でも、原則として、家を建てることは可能です。

登記上の地目が山林の土地
(図5:登記上の地目が山林の土地)

しかし、法的な制限や災害区域の指定がされている場合は、
建築ができない場合があり、市街化調整区域の場合も、
条件などクリアーしていない限り、建物を建築することができません。

そのため、まず法的な制限については、森林法にもとづいて、
下図6のように、保安林に指定されている土地でないかの確認が必要です。

家を建てるのに法的な制限のある保安林
(図6:家を建てるのに法的な制限のある保安林)

なぜなら、保安林に指定されている土地は、
立木の伐採や土地の区画形質の変更が制限されているため、
家を建てるための開発にあたり、保安林の指定が障害になるからです。

保安林の指定は、都道府県知事から法務局に通知されて、
それによって、通常、登記の地目を保安林に変更します。

登記の地目が保安林の例
(登記の地目が保安林の例)

しかし、実際は保安林に指定されているのに、
登記の地目が山林のままになっている場合や、
逆に、保安林の指定が解除されているのに、
登記の地目が保安林のままになっていることもあります。

そのため、登記の地目だけで判断するのではなく、
念のため、保安林の指定状況を、
都道府県の森林担当部署で確認することをお勧めします。

また、下図7のように土砂災害特別警戒区域になっている土地は、
建築制限があるため、災害区域の指定についても、
市区町村役所の担当課で確認しておくと良いです。

土砂災害特別警戒区域は建築制限あり
(図7:土砂災害特別警戒区域は建築制限あり)

もし、下図8のような市街化調整区域内の土地の場合は、
原則として、家を建てることはできませんが、
一定の基準を満たして、開発などの許可を受ければ、
家を建てられる場合があるため、市区町村役所の担当課で確認が必要です。

市街化調整区域内の土地は、原則、家を建てられない
(図8:市街化調整区域内の土地は、原則、家を建てられない)

なお、山林の土地に家を建てる場合には、
その土地の地目を『宅地』に変更する登記を申請する必要があります。

地目変更は、土地の現況が宅地に変更された日から1か月以内に、
土地の登記名義人が、管轄の法務局に申請しなければなりません。

実際の手続きは、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

地目変更とは何かや、自分でできるのかどうか、
費用や必要書類については、
地目変更とは?自分でできる?費用や必要書類」で、
くわしく解説しています。

山林と原野の違い

山林と原野の違いは、次のとおりです。

山林とは、下図9のように、人の背丈を超える樹木や竹が、
耕作によらず自然に密集している土地のことです。

山林の具体例
(図9:山林の具体例)

原野とは、下図10のように、耕作されておらず、雑草や低木、
灌木などが生い茂る土地のことです。

原野の具体例
(図10:原野の具体例)

つまり、耕作がされていない土地という点は、
山林と原野は同じですが、主に大木が生えているのが山林で、
主に低木や雑草が生えているのが原野ということになります。

なお、地目が原野とはどんな土地なのかについては、
原野とは?地目が原野とはどんな土地?」で、
くわしく解説しています。

山林と雑種地の違い

山林は、耕作の方法によらないで、
竹木が自然に生育している土地で、
その物理的な状況が地目の判断基準となります。

一方、雑種地は不動産登記上の山林、田、畑、宅地など、
他の23種類の地目のいずれにも該当しない土地を指します。

例えば、下図11と下図12の駐車場や資材置場のように、
特定の用途に利用されているものの、
他の地目には当てはまらない土地が該当します。

駐車場
(図11:駐車場)
資材置場
(図12:資材置場)

ただし、下図13のように、何ら特定の目的に利用されておらず、
中途半端な状態の土地も、雑種地とされることがあります。

特定の目的に利用されていない土地も雑種地
(図13:特定の目的に利用されていない土地も雑種地)

山林は、土地に竹木が生育しているかどうかが判断のポイントで、
雑種地は、他の地目に該当しない「その他の土地」であることが、
判断のポイントとなります。

なお、地目が雑種地とは具体的にどんな土地なのかは、
雑種地とは?地目が雑種地とはどんな土地?」で、
くわしく解説しています。

山林と宅地の違い

山林と宅地の違いは、「竹木が育成している土地」なのか、
それとも「建物が建っている土地」なのか、
という土地の利用目的と現在の状態の違いにあります。

そのため、下図14のように、登記簿上の地目が山林であっても、
建物が建っていれば、宅地と判断される場合があり、
建物を建てた場合は、その土地の実際の地目は宅地となります。

登記の地目が山林でも、建物が建っていれば地目は宅地
(図14:登記の地目が山林でも、建物が建っていれば地目は宅地)

なぜなら、不動産の登記簿に記載された地目は、
登記がされた当時の利用目的と現況によって判断されるため、
地目が変わっても、地目変更登記をしていなければ、
登記上の地目はそのままになっているからです。

また、下図15のような広大な山林の一部に建物を建てた場合、
その建物が建つ部分の土地の地目は宅地になります。

広大な山林の土地の一部に、建物を建てた場合の地目
(図15:広大な山林の土地の一部に、建物を建てた場合の地目)

建物が建っていない残りの山林部分は「山林」のままですが、
土地全体を「山林」のままにしておくと、
銀行の融資を受けられないなどのデメリットがあります。

そのため、建物部分と山林部分に土地を分筆して、
それぞれ「宅地」「山林」の地目に変更する登記手続きが、
必要になる場合もあるのです。

もし、具体的な地目変更などの手続きについて、
ご不明な点があれば、お近くの土地家屋調査士に相談する方法があります。

まとめ

山林とは、耕作の方法によらないで、
背丈が高い竹木が生育する土地のことです。

山林に家を建てることは可能ですが、
すべての山林で建築できるわけではなく、土地の用途地域や、
保安林・土砂災害特別警戒区域などの指定によって、
建築が制限される場合があるため、関係役所での事前確認が必要です。

また、宅地や雑種地、原野との違いは、
宅地は、建物の敷地になっている土地のことで、
雑種地は、通常、特定の利用目的がある土地のことで、
原野は、耕作の方法によらないで、背丈が低い雑草、
かん木類の生育する土地という違いがあります。

以上、地目が山林とは?山林に家は建てられる?
原野・雑種地・宅地との違いについて解説致しました。

なお、山林や宅地、原野や雑種地など、
全23種類の地目については、
地目の種類は?全23種類の地目を徹底解説」をご参照下さい。

原野とは何か、具体的にどんな土地なのかについては、
原野とは?地目が原野とはどんな土地?」で、
くわしく解説しています。

雑種地とは何か、具体的にどんな土地なのかについては、
雑種地とは?地目が雑種地とはどんな土地?」をご確認下さい。

スポンサーリンク